
KANADE
奏 かなで
19歳。人の心の声を聞き、歌で感情と魔力を動かす魔法使い。すべてを知ることに疲れ、いつも「半分だけ」で生きてきた。
COMPLETE全10章
STORY
魔法が息づく異世界と、現代の東京。
幼い頃の事故をきっかけに、他人の心の声が聞こえるようになった魔法使いの少年・奏。嘘も好意も悪意も、聞こうとしなくても伝わってくる。だから彼は、誰にも本心を見せず、力も人付き合いも半分だけで生きてきた。
ただ一人、幼なじみの少女・蒼の心だけは何も聞こえない。共存を学ぶために向かった東京で、離れていた三か月が二人の世界を変えていく。
“世界が半分になったのではない。
自分の中から、一番大切な半分が、東京へ行ってしまった。
CHARACTERS
知ることと、信じること。その間に立つ二人。

KANADE
19歳。人の心の声を聞き、歌で感情と魔力を動かす魔法使い。すべてを知ることに疲れ、いつも「半分だけ」で生きてきた。

AOI
奏の幼なじみ。壊れたものに残る記憶を読み、その欠片を縫い合わせる魔法を持つ。彼女の心だけは、奏にも聞こえない。
WORLD
LUMIERA
魔法が暮らしの一部として息づく国。北端のラト村では、空と青鐘湖が世界を青く染める。
TOKYO
光と雑音と無数の心が交差する街。魔法使いは銀の腕輪を着け、管理される力として生きる。
ILLUSTRATION GALLERY
10章のために描かれた高解像度アニメイラスト。選ぶと、その章から読めます。
READ THE NOVEL
COMPLETE STORY · 10 CHAPTERS
章を選び、文字の大きさと画面の明るさを整えてお読みください。言語を切り替えると本文も変わります。
LATO VILLAGE / TRANSFER PLATFORM
第1章
ラト村の朝は、青鐘湖から届く風の匂いで始まる。奏には、その風より先に村人たちの心が聞こえた。パン屋の焦り、門番の眠気、見送りに集まった子どもたちの好奇心。言葉にされない声が、いつも空気を満たしている。
転移列車の前に立つ蒼だけは静かだった。銀色の髪を耳へかけ、銀の腕輪を確かめる横顔から、奏は何ひとつ読み取れない。幼い頃から変わらない沈黙は、彼にとって唯一の安らぎであり、いちばん怖い謎でもあった。
『三か月だけだから』と蒼は笑った。奏も笑い返したつもりだったが、松葉杖を握る手には力が入った。行かないで、という言葉は声にならない。心が聞こえるせいで本音を避けてきた彼は、自分の本音さえうまく口にできなかった。
列車が青い光へ溶ける。窓の向こうで蒼が小さく手を振った。光が消えたあと、奏の耳には村じゅうの心が戻ってきた。それなのに世界は、ひどく静かだった。
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THE OTHER HALF OF THE WORLD
聞こえないから、想像できる。
知らないから、信じることができる。